多くの大人が、この質問に不安を感じました。なぜなら、この質問には、人を殺したいと思っている状態があり、それで「殺してはいけないとは思えない」という心理を感じるからです。
ニヒリズムを生み出した哲学者ニーチェは、あの有名な一言「神は死んだ」と言いました。ニーチェは、上記の質問に対して答えています。それは、「重罰になる可能性をも考慮に入れて、どうしても殺したければ殺すべきだ」と言うのです。そして、ニーチェの研究家である、ある大学教授は、これこそ最も誠実な答えであり、上記の質問に誠実に対するなら、このような答えしかないというのです。
「これはひどい!」と一蹴しないで考えて見ると、確かに「神がいない」という前提で考えるなら、人が人を殺してはならないという理由は見つからないのです。
上記の質問に対して「殺してはならない」と確かな理由をもって答えることが出来るとするなら、「神はいる」という前提が絶対に必要なのです。先の生徒の質問に先生と周りの大人たちが、どのように答えたのか分かりませんが、命の源である創造主なる神の存在があって、初めて「殺してはならない」の理由が見出されるのです。
優劣と淘汰という進化論的価値観、そこから生じる、命の軽視が人々の心を蝕んでいます。ある教育学者は、いじめに関して「これは、教育の失敗ではなく、教育の成果だ」と述べていました。神なき世界観、価値観に基づく教育の必然的結果であると。「神はいる」ここから初めて、命の意味、尊さが分かるのです。